「うちの子、中学まではずっと数学が得意だったのに……」。進学校に入って最初の定期テストのあと、こんな声を本当によく聞きます。
岐阜高校・岐阜北高校・大垣北高校・多治見北高校・関高校・恵那高校・可児高校・一宮高校……。地域の進学校に合格して、希望をもって入学した4月。ところが最初の数学のテストで、中学では取ったことのない点数が返ってくる——。
これは決してめずらしいことではありません。むしろ、毎年多くの新高校生が同じ経験をしています。本人は「自分だけ落ちこぼれたのかも」と落ち込み、保護者の方は「サボっているのでは」と心配になる。
でも、ちょっと待ってください。
これは気合いややる気の問題ではなく、「量」と「受験者の層」で説明できる現象です。
「高校数学はなぜ難しいのか?」——この記事では、その答えを高校入試と大学入試という”実際のテスト”から逆算して解き明かします。「難しい気がする」という感覚で終わらせず、問題の語彙数(量)・試験時間・受験者数・平均点といった、数字で測れるものだけを並べて比べていきます。定量化できる事実を積み重ねれば、「なんとなく難しい」の正体がはっきり見えてきます。そして、正体さえ分かれば、今の学年から具体的に動き始めることができます。 前もって知っておくことが、いちばんの先手です。
「難しさの数字を見たら、余計に怖くなりそう」と思いませんか?実は逆なんです。心理学の研究でも、困難を前もって知ることは不安を増やすのではなく、その不安に対処できるチャンスを増やすと示されています。正体が分かれば、怖くなくなる。それがこの記事の目的です。
※参考:Aspinwall & Taylor (1997). A stitch in time: Self-regulation and proactive coping. *Psychological Bulletin, 121*(3), 417–436.
【この記事でわかること】
・高校数学は中学数学の「何倍の量」なのか(語彙数・試験時間で比較)
・平均点は中学も高校もほぼ同じなのに、なぜ「急に解けなくなった」と感じるのか
・共通テストの数学が「本当はどれくらい難しいテスト」なのか
・入学後に置いていかれないために、いつ・何を始めればよいか
・保護者の方が「どう受け止め、どう支えるか」の具体的な視点(後半の保護者向けセクションで解説)
この記事で比べる「前提」
数字を見る前に、何と何を比べているのかをそろえておきます。この記事では、次の2つを比較します。
- 中学数学:公立高校を志望する中学生が受ける、公立高校入試の数学
- 高校数学:国公立大学(理系)を志望する高校生が受ける、大学入試の数学
ここで知っておきたいのが、国公立大学を目指す場合、数学の試験は1回では終わらないということです。
| 段階 | 試験名 | 誰が問題を作るか | 数学で受ける内容 |
|---|---|---|---|
| ① 1次 | 共通テスト | 全国共通(大学入試センター) | 数学ⅠA・数学ⅡBC の2科目 |
| ② 2次 | 各大学の個別試験(二次試験) | 大学ごとに作成 | 大学が指定する数学(記述式が中心) |
つまり、国公立大の理系を目指す高校生は、まず全員共通の「共通テスト」で数学ⅠAとⅡBCの2科目を受け、さらに志望する大学がつくる「二次試験」の数学も受けるという二段構えになります。中学生が「公立高校入試の数学1回」で勝負するのとは、そもそも受ける回数も量も違うのです。
・共通テスト=全国の受験生が同じ問題を解く1次試験。理系の数学はⅠAとⅡBCの2科目。
・二次試験=大学ごとに問題が違う2次試験。記述式が中心で、共通テストより深く問われる。
・この記事の「量」の比較は、まず共通テスト数学(ⅠA+ⅡBC)を「高校数学」の代表として行います。
それでは、全体像を表で確認しましょう。
| 比べる軸 | 高校入試(中学範囲) | 大学入試(高校範囲・共通テスト数学ⅠA+ⅡBC) |
|---|---|---|
| 問題の語彙数 | 約1,100〜1,300語 | 約7,500語(2科目合計) |
| 試験時間 | 50分 | 140分(2科目合計/+二次は120〜150分) |
| 受験者の層 | ほぼ全員(約100万人) | 上位〜中位中心(約46万人) |
| 平均点の意味 | 「全体」の中での平均 | 「すでに絞られた集団」の中での平均 |
「平均点はそんなに変わらないのに、受験する人の”顔ぶれ”がまるで違う」。ここが今日の話のいちばん大事なポイントです。順番に見ていきましょう。
高校数学は中学数学の「何倍の量」なのか?
まず、いちばん実感しやすい「量」から比べます。問題に使われている語彙数(文字や言葉の量)を数えてみると、差は一目瞭然です。
| 試験 | 問題の語彙数 |
|---|---|
| 岐阜県 公立高校入試 数学 | 1,308語 |
| 愛知県 公立高校入試 数学 | 1,147語 |
| 共通テスト 数学ⅠA | 3,612語 |
| 共通テスト 数学ⅡBC | 3,871語 |
| 共通テスト 数学合計(ⅠA+ⅡBC) | 7,483語 |
※ 図・数式・統計表を除いた語彙数です。出典:各都道府県発表問題・大学入試センター。
共通テストは「数学ⅠA」と「数学ⅡBC」の2科目を受けるのが一般的です。これが高校数学の到達点なので、2科目を合わせた7,483語を「高校数学の量」として比べてみましょう。高校入試の数学(約1,100〜1,300語)と並べると、およそ5〜6倍(岐阜と比べて約5.7倍、愛知と比べて約6.5倍)。それだけの言葉の量を読み、処理しなければならない計算になります。
しかも、これは「読む量」だけの話です。実際にはその一つひとつが、中学より抽象的で、複数の単元を組み合わせて考える問題になっています。
【高校数学が「重く」感じる理由】
・単純に読む量・解く量が5〜6倍に増える
・一問の中で複数の単元を組み合わせる問題が増える
・「公式を覚えれば解ける」問題が減り、「考えて使い分ける」問題が増える
試験時間で見ても、量は本当に増えているのか?
「語彙数が5〜6倍なら、その分だけ時間も長いのでは?」と思われるかもしれません。試験時間を比べてみましょう。
| 試験 | 試験時間 |
|---|---|
| 岐阜県・愛知県 公立高校入試 数学 | 50分 |
| 共通テスト 数学ⅠA | 70分 |
| 共通テスト 数学ⅡBC | 70分 |
| 共通テスト 数学合計(ⅠA+ⅡBC) | 140分 |
| 国公立大の二次試験 数学(例) | 120〜150分 |
ここでも合算で比べてみましょう。高校入試の50分に対し、共通テスト数学はⅠA+ⅡBCで合計140分。試験時間は約2.8倍にしか増えていません。
一方で、読む量(語彙数)は約5〜6倍。増えた時間に対して、処理すべき量はその倍のペースで増えていることになります。言いかえれば、同じ1分間に処理しなければならない情報量が、中学のおよそ2倍になっているということです。中学までは「ていねいに解けば最後までたどり着けた」人でも、高校では「速く・正確に」が同時に求められるようになります。最初のテストで時間が足りなくなるのは、サボったからではなく、求められるスピードの基準そのものが上がっているからなのです。
平均点は中学も高校もほぼ同じなのに、なぜ「急に解けなくなった」と感じるのか?
ここで意外に思われるのが、平均点はそれほど変わらないという事実です。
| 試験 | 平均点(100点換算) |
|---|---|
| 愛知県 公立高校入試 数学 | 約60点 |
| 岐阜県 公立高校入試 数学 | 約50点 |
| 共通テスト 数学ⅠA | 53.51点 |
| 共通テスト 数学ⅡBC | 51.56点 |
出典:各都道府県発表値・大学入試センター。
数字だけ見ると、「なんだ、平均点は50〜60点で同じくらいじゃないか」と感じます。それなのに、なぜ多くの生徒が「中学のときより全然解けない」と感じるのでしょうか。
答えは、点数を取り合っている”相手”がまったく違うからです。
| 試験 | 受験者数 | どんな集団か |
|---|---|---|
| 高校入試 | 約100万人 | その学年のほぼ全員 |
| 共通テスト | 約46万人 | 大学進学を目指す上位〜中位の層 |
※ 高校入試の受験者数は学校基本調査(中学生在籍者数)からの概算、共通テストは大学入試センター発表。
高校入試は、得意な子も苦手な子も含めた学年のほぼ全員が受けます。その中での平均点が50〜60点です。
一方、共通テストを受けるのは、そもそも大学進学を目指して勉強してきた人たち約46万人。中学時代に数学が苦手だった層の多くは、この母集団にそもそも含まれていません。
つまり「すでに勉強してきた人たちだけが集まった中での平均53点」。中学の「全員での平均53点」とは、重みがまったく違うんです。
進学校に入った生徒は、もともと数学が得意だった人が多い集団です。その中で順位を競うことになるので、中学までと同じ努力量では、相対的な位置が下がって見えてしまう。これが「急に解けなくなった」という感覚の正体です。
毎年、全国の進学校に入学した多くの高校生が同じ経験をしています。「自分だけが置いてかれた」わけではありません。これは「土俵が変わった」現象であり、原因が分かれば対処できます。
もし高校3年生全員が共通テストを受けたら、平均点は何点になるのか?
ここで、ひとつの思考実験をしてみましょう。
共通テストは「上位〜中位の約半分が受験するイメージ」のテストです。では、もし数学が苦手な層も含めて、高校3年生全員が共通テストの数学を受けたら、平均点はどうなるでしょうか。
得点が正規分布に近いと仮定して計算すると、全体の平均点は30点ちょっとまで下がると考えられます。いまの「53点」という平均点は、あくまで勉強してきた人たちが集まった中での数字。全員で受ければ、平均はぐっと下がるということです。
言いかえれば、共通テストの数学は「全員で受ければ平均30点台」という、かなり手ごわいテストだということ。難易度を「中学の何倍」と数値で言い切ることはできませんが、これほど絞られた集団でも平均が50点台にとどまる事実が、その難しさを物語っています。
この「全員が受ければ平均30点台」という数字は、得点分布を正規分布と仮定したうえでの推計(思考実験)であり、公式に発表された数値ではありません。あくまで「難易度の大きさ」をイメージするための目安としてお読みください。
裏を返せば、量と難易度の上がり方を早い段階で知って動き始めるほど、確実に差をつける余地が生まれるということでもあります。同じ土俵に立つ前から準備できている人は、それだけ有利な出発点に立てます。この記事をここまで読んでいるあなたは、すでにその一歩目を踏み出しています。
高1〜高3、いつ・何から動けばよいか?
ここまで読んで不安になった方もいるかもしれません。でも大事なのは、「量と難易度が上がると、前もって知っておくこと」です。知っていれば、対処できます。高校数学が中学数学の量(問題語彙数)が5~6倍、試験時間が2.8倍、単位時間あたりに処理する情報量は約2倍(6➗2.8)となります。
高校受験でも勉強頑張っていたのに・・・大変な感じがしますね。でも、高校1年生や2年生からこの現実を理解し、普段から数学の演習をすることで達成できます。
毎年、この量と難しさに直面しながら、高2・高3で大きく伸びていく高校生を多くのところで目にします。共通しているのは、「土俵が変わった」と気づいた時点で動き始めたことです。
岐阜県と愛知県の進学校では、6月の試験後から授業のスピードが一気に上がります。学年ごとに「今すべきこと」は変わります。
| 学年 | いちばん大事なこと | 具体的な第一歩 |
|---|---|---|
| 高1 | 量に慣れる・土台を作る | 学校の汎用問題集(4STEPやサクシードや4プロセスなど)を試験前だけでなく普段から問題演習をする習慣をつける。高校数学が中学数学の数倍の分量になるならば、試験前に22倍3倍の学習をすることは不可能なので、日頃から演習をすることでしか解決しません |
| 高2 | つまずき単元を放置しない | 高1で苦手になった単元を一つずつ戻して固める。共通テストまで2年あることを意識して、早めに手を打つ |
| 高3 | 処理スピードを上げ、2段階を見通す | 過去問演習で「時間内に処理する」感覚を育てる。共通テスト数学(ⅠA+ⅡBC)と二次試験の2段階を見越した計画を立てる |
学年を問わず、すべての生徒に共通して意識してほしいことが3つあります。
- 「量」に慣れることを最初の目標にする:難問を解く前に、まず多くの問題を時間内に処理する練習から。スピードは慣れで身につきます。
- 積み上げ式だと割り切る:高校数学は前の単元が次の単元の土台になります。一度つまずくと後で響くので、その都度つぶしておく。
- 「量をこなす」だけでなく「使い方」も変える:高校数学は「公式を覚えれば解ける」問題が減り、「考えて使い分ける」問題が増えます。解いた後に「なぜこの解き方か」を一言説明できるようにする練習が、じわじわ効いてきます。
【今の学年で「最初の一手」をまとめると】
・高1:学校の汎用問題集(4STEPやサクシードや4プロセスなど)を試験前だけでなく普段から演習する
・高2:高1の苦手単元を特定して戻る+共通テストの形式に慣れ始める
・高3:共通テスト過去問で時間内処理の練習+二次試験との配点バランスを確認する
最初のテストの点数より、そのあとどう動いたかのほうが、ずっと大事です。「土俵が変わった」と気づいて動き始めた生徒ほど、夏以降の伸びが大きい。高3になってから慌てるより、今この記事を読んでいる段階で動けているほうが、確実に有利です。


保護者は、この「量の差」をどう受け止めればよいか?
最後に、保護者の方へ。
進学校に入ったお子さんの数学の点数が下がったとき、いちばん避けたいのは「サボっているからだ」と決めつけてしまうことです。ここまで見てきたとおり、これは努力不足ではなく、土俵そのものが変わったことによる現象です。
- 量が5〜6倍に増え、求められるスピードも上がっている
- 周りはもともと数学が得意だった生徒ばかり
この2つを理解しているだけで、お子さんへの声かけは大きく変わります。「なんでこんな点数なの」ではなく、「中学とは量が全然違うらしいね、どこから立て直そうか」と、一緒に作戦を立てる側に回ってあげてください。
点数より大事なのは、最初のつまずきを「放置しないこと」。早めに立て直せた子ほど、その後の伸びが大きいです。
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まとめ|量を知っていれば、こわくない
最初に「正体が分かれば怖くなくなる」とお伝えしました。ここまで数字を並べてきた結果、その正体はシンプルです。中学数学と高校数学の差を整理すると次のとおりです。
- 量:問題の語彙数で見ると、共通テスト数学(ⅠA+ⅡBC)は高校入試の約5〜6倍
- スピード:語彙数は5〜6倍なのに試験時間は2.8倍。1分あたりの処理量が増えている
- 難易度:平均点は中学も高校も50〜60点で近いが、受験者の層がまるで違う(全員 vs 上位〜中位の約46万人)
- 本当の難しさ:全員が受ければ共通テスト数学の平均は30点台になるという推計もあるほど手ごわい
大切なのは、これを前もって知っておくこと。量と難易度が上がると分かっていれば、高1の段階から、あるいは高2・高3でのつまずきの場面でも、落ち着いて立て直すことができます。
「最初のテストで思ったより点が取れなかった」「高校の数学のスピードについていけるか不安」「高2になって苦手が積み重なってきた」——どの段階でも、早めに立て直しの作戦を立てるのがいちばんの近道です。リード予備校では、今の学年・状況に合わせて、何から手をつけるかを一緒に整理しています。
毎年、多くの高校生がこの量と難しさに直面しながら、それでも乗り越えています。この記事を読んでいるあなたも、その一人になれます。さらに言えば、「どれほど大変な土俵なのか」を知ったうえで向き合える人は、何も知らずに直面する人よりも、確実に一歩有利なスタートを切っています。
あとは、動き出すだけです。大学受験に精通した学校の先生や予備校の先生に相談して、自分に合った勉強の進め方を一緒に決めていきましょう。ひとりで抱え込まず、早めに動いた人ほど、選択肢が広がります。
迷っているなら、点数が大きく開く前に、早めにご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. なぜ進学校に入ると、急に数学の点数が下がるのですか?
A. 問題の量が高校入試の約5〜6倍に増えるうえ、周りがもともと数学を得意とする生徒ばかりになるためです。努力不足ではなく、求められる基準と競う相手が変わったことが主な原因です。
Q2. 高校数学は中学数学の何倍の量があるのですか?
A. 共通テスト数学(ⅠA+ⅡBC)の語彙数は合計で約7,500語、高校入試の数学は約1,100〜1,300語です。単純な言葉の量で比べると、およそ5〜6倍になります。
Q3. 共通テストの数学は、どれくらい難しいのですか?
A. 大学進学を目指す上位〜中位の約46万人が受験して平均が50点台です。仮に高校3年生全員が受ければ平均は30点台まで下がるという推計もあり、絞られた集団でも50点台にとどまること自体が難しさを示しています(※この推計は思考実験で、公式値ではありません)。
Q4. 数学が苦手になってしまったら、もう追いつけませんか?
A. 追いつけます。高校数学は積み上げ式なので、つまずいた単元を早めに戻って固めるほど取り戻しがラクになります。高1・高2の段階であれば十分に間に合いますし、高3でも「どこから戻るか」を早めに特定できれば共通テストまでに立て直せます。気づいた時点が始めどきです。
Q5. いつから対策を始めればよいですか?
A. 今すぐが、いちばん早い出発点です。高1なら学校の汎用問題集を普段から演習する習慣を作ることから。高2なら高1の苦手単元に戻ること。高3なら共通テスト過去問で時間内処理の感覚を養うことが第一歩です。どの学年でも「気づいたとき」がスタートラインです。
出典:各都道府県教育委員会発表の公立高校入試問題、大学入試センター(共通テスト問題・平均点)、学校基本調査(受験者数の概算)。
入試制度・試験時間・配点・平均点などは年度によって変わります。最新の情報は、必ず各都道府県教育委員会・大学入試センター・各大学の公式サイトおよび最新の募集要項でご確認ください。










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