「この学部に進んで、AIに仕事を奪われないかな?」と感じたら
「行きたい学部はある。でも、その仕事って、これからAIに取って代わられるんじゃないか」。
進路を考え始めた高校生の中には、こんなふうに手が止まってしまう人が少なくありません。
しかし、相談の場で「AIで○○の仕事はなくなるんですよね?」と正面から質問されることは、実はあまり多くないことです。
それでも、保護者の方の言葉の端々から、お子さんの将来に対する一抹の不安がにじむ場面はよくあります。「情報系に進めばAIに強くなれるのか」「経理や会計の仕事はAIに置き換わるのでは」「法律の世界もAIで変わるのでは」——こうしたテーマは、実際に進路の話の中で何度も出てきます。
「なくなる学部」を探すより、「どの学部でもAIとどう組むか」を考えるほうが、ずっと前向きで現実的なんです。
この記事では、岐阜・愛知の進学校に通う高校生と保護者の方に向けて、生成AIの研究データをもとにした「冷静な学部選びの考え方」を整理します。名古屋大学・岐阜大学の学部にも当てはめながら、具体的に見ていきましょう。
この記事でわかること
- 「AIで仕事がなくなる」という不安の、本当のところ
- 生成AIが「得意な作業」と「苦手な作業」の違い
- 名古屋大学・岐阜大学の学部を、AIとの関わりで見るとどうなるか
- AIの影響を受けやすい分野を選ぶときの「3つの心構え」
- 後悔しない学部選びのために、高校生が今からできること
そもそも「AIで仕事がなくなる」は本当なのか?
結論から言うと、「生成AIで、特定の仕事がまるごと消える」と決まったわけではありません。
よく引用されるマイクロソフトリサーチの研究を見てみましょう。
この研究は、生成AI(Bing Copilot)と利用者とのやりとり約20万件を分析し、それがアメリカの職業データベース(O*NET)の「仕事の活動」とどれくらい重なるかを調べたものです。そこから、職業ごとに「AI適用性スコア(AIと重なる作業がどれくらい多いか)」を出しています。
ここで大切なのは、このスコアが測っているのは「AIが仕事を奪うかどうか」ではなく、「AIが仕事のやり方をどう変えるか」だという点です。
研究者自身も、「この研究は仕事の消滅について結論を出していない」と、はっきり注意しています。
「AI適用性が高い」とは、「AIと重なる作業が多い」という意味であって、「その仕事がなくなる」という意味ではありません。研究者自身が、消滅と結びつけることを戒めています。
つまり、ニュースで見かける「AIでなくなる仕事ランキング」のような単純な話とは、少し違うのです。
まずはこの前提を押さえたうえで、次に「AIが得意な作業」と「苦手な作業」の違いを見ていきましょう。


生成AIが「得意な作業」と「苦手な作業」は何が違うのか?
研究を読み解くと、生成AIが重なりやすい作業と、そうでない作業には、わかりやすい傾向があります。
- AIと重なりやすい作業:情報を集める/文章を書く・要約する/翻訳する/調べる/データを分析する
- AIが重なりにくい作業:体を使う/人を直接ケアする/現場で手を動かす/最終的な判断と責任を引き受ける
実際に、研究でスコアが高かった職業・低かった職業の例を並べると、違いがはっきりします。
| 区分 | 職業の例 | 共通する特徴 |
|---|---|---|
| AI適用性が高い(重なりやすい) | 通訳・翻訳者、歴史家、ライター、営業、プログラマー、カスタマーサービス、ジャーナリスト、経営アナリスト | 情報を扱い、言葉で伝える作業が中心 |
| AI適用性が低い(重なりにくい) | 看護助手、採血技師、現場作業員、機械オペレーター、塗装・左官の助手 | 体・手・対人・現場が中心 |
出典:Microsoft Research, *Working with AI*(2025)
「大学を出れば安心」とは限らない
ここで、進学校に通うみなさんに特に知っておいてほしいことがあります。
この研究では、大学卒の学位が必要な専門職ほど、AI適用性が高い傾向が見られました。
つまり、「とりあえず大学に行って専門職に就けば、AIから守られる」という考え方は、もう通用しにくいということです。
だからこそ、「どの学部なら安全か」を探すより、「どの学部に進んでも、AIを使いこなす力を身につける」という発想が大切になります。
学部を「AIに強い/弱い」で二分できるのか?
「じゃあ、AIに強い学部と弱い学部のリストがほしい」と思うかもしれません。
ですが、ここが一番大事なところです。学部を「安全」「危険」の2つに分けるのは、かなり乱暴なのです。
理由は、先ほどの研究が測っているのが「職業」ではなく「仕事の中のタスク(作業)」だからです。
同じ学部・同じ職業の中にも、「AIと重なりやすい作業」と「人間にしかできない作業」が必ず混ざっています。
おすすめの考え方:学部で「安全/危険」が決まるのではなく、その仕事の中の「どの作業がAIと重なるか」で決まる。 だから、どの学部に進んでも、AIを使いこなす力が必要になります。
この考え方を、ある言葉がうまく言い表しています。
「AIに仕事を奪われるのではなく、AIを使う人に仕事を奪われる」。半導体大手NVIDIAのCEO、ジェンスン・フアン氏の言葉です。学部選びにもそのまま当てはまります。
では、この「タスク単位」の視点で、地元から進学する人も多い名古屋大学・岐阜大学の学部を見てみましょう。
名古屋大学・岐阜大学の学部を「タスク単位」で見るとどうなる?
ここでは、両大学の学部・学科を、「AIと重なりやすい作業が多い傾向」と「AIに代替されにくい核が大きい傾向」の2つの表で整理します。
ただし、何度もお伝えしているとおり、これは「学部のランク付け」ではありません。どちらの表の学部にも、両方の作業が併存しています。
表A:AIと「重なりやすい作業」が多い傾向(=使いこなせば武器になる)
| 大学 | 学部・学科 | AIと重なりやすい作業 | それでも人間が担う核 |
|---|---|---|---|
| 名古屋大 | 文学部/法学部/経済学部 | 調査・文章作成・翻訳・要約・分析 | 解釈・価値判断・交渉・倫理 |
| 名古屋大 | 情報学部 | プログラミング・データ処理 | 課題定義・設計思想・AIを作り評価する力 |
| 名古屋大 | 教育学部(人間発達科学科) | 教材作成・情報提供・添削 | 対人指導・動機づけ・学級経営 |
| 岐阜大 | 地域科学部/社会システム経営学環 | 政策・経営のデータ分析、資料作成 | 現場の合意形成・実装・対人 |
| 岐阜大 | 工学部 電気電子情報工学科(情報コース) | コーディング・解析 | システム設計・現場での実装 |
表B:AIに「代替されにくい核」が大きい傾向(=身体性・対人・手技・現場)
| 大学 | 学部・学科 | 代替されにくい核 | ただし併存する“AIと重なる”作業 |
|---|---|---|---|
| 名古屋大 | 医学部(医学科・保健学科) | 診察・手技・救急・ケア | 診断補助・画像の読影・文献調査・研究 |
| 名古屋大 | 工学部(機械・航空宇宙/環境土木・建築/マテリアル ほか) | 実装・施工・実験操作・現場対応 | 設計・シミュレーション・データ解析・執筆 |
| 名古屋大 | 農学部/理学部(実験分野) | 圃場や実験室での手作業・観察 | 実験設計・データ解析・論文執筆 |
| 岐阜大 | 医学部(医学科・看護学科) | 看護・処置・対人ケア | 記録作成・教育資料・診断支援 |
| 岐阜大 | 応用生物科学部(共同獣医学科 ほか) | 触診・処置・飼育・実験操作 | 検査データの解析・文献調査 |
| 岐阜大 | 工学部(社会基盤工学科・機械工学科) | 施工・現場・実習 | 設計・解析 |
この2つの表は、マイクロソフト研究の「仕事の活動(O*NET)」をもとに、当媒体が学部の学びの傾向として整理した目安です。論文が学部や学科を格付けしたものではありません。学部・学科の内容やカリキュラムは年度によって変わるため、必ず名古屋大学・岐阜大学の公式サイトで最新情報を確認してください。
直感と「逆」になりやすい3つの例外
表を見て「あれ?」と思ったところこそ、進路選びで誤解しやすいポイントです。
- 医学部=AIと無縁、ではない:診察や手技は人間の核ですが、診断の補助・画像の読影・文献調査・研究といった知的な作業はAIと重なりやすい部分です。医療は「身体の部分」と「知識の部分」を分けて考えると正確です。
- 教員(教育学部)は意外と「重なる」側:教材づくりや情報提供はAIが得意な領域です。OECDの分析でも、教育・指導や司書などは「AIとの重なりが大きい」と指摘されています。一方で、子どもへの対人指導や動機づけは人間の核として残ります。
- 理系の実験=受けにくい、とは限らない:手を動かす実験操作は代替されにくい一方、実験の設計・データ解析・論文執筆はAIと重なりやすい作業です。
だからこそ、「学部名」だけで安心・不安を判断しないことが大切なのです。
「AIで影響を受けやすい学部」を選んだら不利になるのか?
ここまで読んで、「自分が行きたいのは、表Aの“AIと重なりやすい”側だった」と感じた人もいるかもしれません。
でも、安心してください。「AIと重なる作業が多い=その学びの価値がなくなる」ではありません。
むしろ逆です。AIと重なる領域は、AIを使いこなす側に回れば、もっとも伸びしろが大きい領域でもあります。
文章・分析・プログラミング・調査——こうした作業は、AIを「下書きや相棒」として使える人ほど、生み出せる量と質が一気に上がります。
影響を受けやすい分野を選ぶなら持ちたい「3つの心構え」
- 「AIに任せる作業」より「AIで何を生み出すか」を学ぶ:作業の速さで競うのではなく、AIを使って何を作り、何を解決するかを考える。
- 人間にしかできない核を深める:解釈・創造・対人・倫理・最終判断。これらはどの分野でも人間の強みとして残ります。
- 「専門 × AI」で希少性をつくる:たとえば「法律 × AI」「会計 × AI」「言語 × AI」のように、専門性とAI活用を掛け合わせると、代えのきかない存在になれます。
たとえば、進路相談でよく話題になるテーマで考えてみましょう。
- 情報学部:AIに使われる側ではなく、AIを作る・選ぶ・使いこなす側に立つ学びです。AIが広がるほど価値が高まります。
- 経理・会計や法曹:定型的な書類作成や調査はAIが手伝えますが、最終的な判断・責任・対人交渉という核は人間に残ります。むしろAIで作業を効率化し、判断に集中できる人が強くなります。
「なくなりそうな学部」というレッテルで、行きたい道を狭めてほしくないんです。大事なのは、その学びの中で“AIと組む力”を育てること。
AIに左右されにくい「力」を、学部選びでどう考えればいいのか?
ここまでをふまえると、学部選びの軸は「学部名」よりも「そこで身につく力」に置くのがおすすめです。
AI時代に効く力は、特定の学部だけのものではなく、どの学部でも意識して伸ばせます。
| 身につけたい力 | 伸ばしやすい学び方の例 | AI時代での効き方 |
|---|---|---|
| 問いを立てる力 | 探究学習、ゼミ、研究 | AIに「何を聞くか」を決められる |
| 専門性の深さ | 各学部の専門科目・実習・実験 | AIの答えの正しさを判断できる |
| 対人・協働の力 | グループワーク、現場実習、部活動 | AIにできない調整・合意形成ができる |
| 判断と責任を引き受ける力 | 課題解決型の学び、インターン | 最終決定を担える人になれる |
学部を選ぶときは、「この学部で、この4つの力のどれを伸ばせそうか」という視点を持つと、AIに振り回されにくくなります。
後悔しない学部選びのために、高校生が今からできることは?
最後に、今日から始められる具体的な行動をまとめます。難しいことではありません。
- 興味の「核」を言葉にしてみる:「なぜその分野に惹かれるのか」をノートに書き出す。
- 生成AIを実際に触ってみる:自分の興味分野でAIに質問し、「どこまでできて、どこからが物足りないか」を体感する。
- 「なぜこの学部か」を自分の言葉で説明できるようにする:これは推薦入試の志望理由書や面接にもそのまま効きます。
- その分野の「人間の核」を調べる:気になる職業が、どんな判断や対人の力を必要とするか調べてみる。
- 学部の中身を公式サイトで確認する:学科やカリキュラムは大学ごとに違います。名古屋大学・岐阜大学の公式サイトで実際の学びを見てみましょう。


「なぜこの学部か」を自分の言葉で語れることは、AI時代の進路選びでも、推薦入試でも、同じくらい大切な力です。
保護者は子どもの学部選びにどう関わればよいのか?
保護者の方の世代では、「この資格・この職業に就けば安定」という考え方が一般的でした。
ですが、AIによって仕事の中身が少しずつ変わりつつある今、「安定の形」も変わってきています。
大切なのは、不安をそのままお子さんにぶつけることではなく、一緒に選択肢を冷静に整理することです。
- 「AIでなくなるからやめなさい」ではなく、「その分野でAIとどう付き合えそう?」と問いかける
- お子さんの興味の核を、対話の中で引き出す
- 学部の情報を一緒に調べ、必要なら学校や塾とも連携する
実際に、進路の相談では「AIで仕事がなくなる」「今ある仕事の6割以上がなくなるらしい」「自分のやりたいことが、AIに取って代わられそう」といった声を、多くの生徒さんから聞きます。
新しい技術に進路の不安を感じるのは、いつの時代にもあったことかもしれません。それでも、これだけAIの進展が速いと、不安になる生徒さん・保護者の方が多いのも自然なことです。
この記事は、その不安をあおるためではなく、冷静に考えるきっかけにしていただくために作りました。「なくなる/なくならない」で立ち止まるより、「どの道でもAIとどう組むか」を一緒に考えていきましょう。
> ※「6割以上の仕事がなくなる」といった数字は、さまざまな予測のひとつで、前提や手法によって結論が変わります。確定した未来ではない、という点も親子で共有しておくと安心です。
よくある質問
Q. 文系はAI時代に不利ですか?
A. 一概に不利とは言えません。文章・調査・分析はAIと重なりやすい作業ですが、それは「AIを使いこなせば強くなれる領域」でもあります。解釈・交渉・価値判断といった核は人間に残ります。
Q. 情報学部に進めば安泰ですか?
A. 「安泰」と言い切れる学部はありません。ただ、情報学部はAIを「作る・選ぶ・使いこなす側」に立つ学びなので、AIが広がるほど活躍の場は増えやすいといえます。
Q. 医療系に進めばAIとは無縁ですか?
A. 診察・手技・ケアは人間の核ですが、診断補助・読影・研究といった知的な作業はAIと重なります。医療でも「AIを使いこなす力」は役立ちます。
Q. 教員の仕事はAIで楽になりますか?それとも危ないですか?
A. 教材作成や情報提供はAIが得意で、業務を助けてくれる面があります。一方、子どもへの対人指導や動機づけは人間にしかできない核です。「AIに任せる部分」と「人が担う部分」を分けて考えるのがポイントです。
Q. 経理・会計や法曹の仕事はAIでどう変わりますか?
A. 定型的な書類作成や調査はAIが手伝えるようになります。ただし、最終的な判断・責任・対人交渉は人間に残ります。AIで作業を効率化し、判断に集中できる人ほど価値が高まります。
Q. 「好きなこと」と「なくならない仕事」、どちらで選ぶべきですか?
A. 対立させる必要はありません。好きな分野を選んだうえで、その中で「AIと組む力」を育てれば、好きなことを続けながら強みもつくれます。
AIや労働に関する研究・予測は、前提や手法によって結論が変わります。また、入試制度や学部・学科の内容も年度によって変わります。進路を具体的に検討する際は、必ず各大学の公式サイトや最新の募集要項を確認してください。
まとめ|学部名より「AIとどう組むか」で選べば、選択肢は狭まらない
最後に、この記事の要点を整理します。
- 「AIで仕事がなくなる」と決まったわけではない。研究が測っているのは「AIと重なる作業の多さ」であって、職業の消滅ではない。
- AIと重なるかどうかは、「学部」ではなく「その仕事のどの作業か」で決まる。同じ学部にも、AIと重なる作業と人間の核が混ざっている。
- 名古屋大学・岐阜大学のどの学部にも、両方の作業が併存している。「安全な学部リスト」は存在しない。
- だからこそ、「どの学部に進んでも、AIを使いこなす力を育てる」発想が大切。「AIに仕事を奪われるのではなく、AIを使う人に仕事を奪われる」。
- 学部は「学部名」より「身につく力」で選ぶ。興味の核を言葉にし、AIを実際に触り、「なぜこの学部か」を語れるようにしておく。
AIの登場は、行きたい学部をあきらめる理由にはなりません。
むしろ、「どの道に進んでもAIと上手に組む」という前向きな選び方ができれば、選択肢はむしろ広がります。
迷ったときは、一人で抱え込まず、早めに相談してくださいね。一緒に「自分に合う学びの形」を整理しましょう。
リード予備校では、岐阜・愛知の進学校に通うみなさんの学部選び・進路相談をお手伝いしています。「この学部でいいのか」「AI時代に何を学べばいいのか」と迷ったら、気軽にご相談ください。
出典
- Tomlinson, K., Jaffe, S., Wang, W., Counts, S., & Suri, S. (2025). *Working with AI: Measuring the Applicability of Generative AI to Occupations.* Microsoft Research. arXiv:2507.07935.
- 名古屋大学 公式サイト(学部・学科情報)/岐阜大学 公式サイト(学部・学科情報)
- OECD労働市場分析(2025年3月/労働政策研究・研修機構 訳)
- 大和総研(2024)「生成AIが描く日本の職業の明暗とその対応策」
> ※ マイクロソフトリサーチの研究は、生成AIとの会話データから「AIと重なる作業の多さ」を測ったものです。高校生の進路や雇用の未来そのものを直接予測した研究ではありませんが、学部選びの考え方の参考になります。









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